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戦火の生贄
戦場での陵辱劇をテーマにした小説を中心にしています。※18歳未満は閲覧禁止
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一休奇談


 梅雨が訪れもう幾日か、降り続ける初夏の温い雨が都に漂う死臭をも、洗い流そうとしていた。
 十年以上も続いた山名と細川による、東西の戦は収まる事を知らず、河原には屍が折り重なり、大徳寺の伽藍ですら焼け落ちたという。
 都の外れにあるこの寺も、今や住まう者も無ければ訪れる人も無い破れ寺となっていた。

 そんな人気のない寺に、夜も更けた頃、降り続く長雨を避けるように一人の男がこの寺を訪れた。
 着物も羽織らず、褌姿に胴丸を身に付け太刀を佩いた無精髭の男、まるで野武士や野盗の様ないでたちである。
 実際この男、この乱に乗じて一旗上げようと、財をはたいて具足を買い求めて、骨皮道賢の軍に参加したものの、稲荷山で道賢が討たれると、落武者狩りから逃れつつ追い剥ぎなどで食い繋いできたのであった。
 「畜生、こう長雨が続いたんじゃ商売上がったりだ、袖引きどころか人足も歩いちゃいねえ。」
 男は忌々しげに吐き捨てると雨水を払い横になろうとしたが、堂の暗がりから気配を感じ飛び起きざまに太刀を抜き放った。
 「だ、誰だ!出て来やがれ!」
 暗がりに目を凝らすと、闇夜に溶け込むように襤褸の墨染めを着た老人の姿があった、汚れてはいるが袈裟を纏っているところを見ると、どうやら仏僧らしい。
 「なんだ、爺か…驚かせやがって、おい爺!食い物か金目の物があるならさっさと出しな!」
 男は太刀を向け凄んでみたが、老僧は意にも介さずからからと笑って見せる。
 「物騒な物はしまいなされ、見ての通り、ただの爺じゃよ。」
 「ある物といっても旅の身でな、この襤褸と…あとは濁酒くらいのものじゃ、金になる物などありゃあせんわい。」
 「どうしてもというなら…そうじゃの、そこに打ち棄てられた木像でも持っていって売れば、幾らかにはなるじゃろうて。」
 そう言うと老僧は徳利に口を付け、呆気に取られる男を横目に濁酒を煽る。
 「そのような物は置いて、どうじゃ、お前さんも一杯やらんかね?」
 老僧に様子に毒気を抜かれた男は、腰を降ろすとひったくる様に徳利を受け取ると、同じ様に濁酒を煽った。
 「けっ、不味い酒だぜ…しかし爺、酒を飲んだ上、挙句に仏を売れだ?おめえ本当に坊主か?」
 男の言葉に、老僧は一層可笑しげに笑い声をあげる。
 「ははは、随分と信心深い事を言う、お前さんこそ本当に野盗かね?」
 「なに、あの様な物は只の木像に過ぎんよ、仏も極楽も己の内にあり、濁酒も楽しめばほれ極楽じゃよ。」
 からからと笑う老僧に、男の方は不機嫌な顔で更に濁酒を煽る。
 「この気狂い坊主め何が極楽だ、今や何処へ行っても戦と屍ばかり、まさに地獄じゃねえか。」
 「どうかのう、地獄も極楽も我が胸の内にありじゃ、まあ焦らず一休みしながら考えるがよかろう。」
 「それにお前さん、地獄が嫌ならそのような太刀は早う棄てなされ、人を殺めていれば鬼と化し、いずれ本当に地獄に飲まれてしまうぞ。」
 老僧の言葉に男はぞっとした、確かに戦場で太刀を振るえば己を忘れて人を切り、身包みを奪おうとした勢いで太刀を抜き必要のない殺生をした事もある。
 しかし、太刀で身を立てると決めた男が、早々にその性を変えられる筈も無く、頭を振って怖気を振り払うと持った徳利を叩きつけた。
 「説教なら御免だ爺!本当に極楽に送られたくなければ、さっさと消えろ!」
 「やれやれ、死ぬのは御免じゃ、まだまだ浮世を楽しみたいからのう。」
 そう言うと、老僧は逃げるように暗がりへと消えていった。
 老僧が消えるのを見届けると、男は横になり寝息を立て始めた。

 「もし…もし…」
 横になってから如何ほどが過ぎただろうか、耳元で語りかける声に目を覚ますと、枕もとに一人の老婆が座っていた。
 白髪を乱れさせ、閉じた目は盲の為か、まるで奪衣婆を思わせる不気味な姿である。
 男は肝を潰し、転がる様に老婆から離れると、慌てて太刀に手を伸ばす。
 「な、なんだこの婆、妙な真似するとぶっ殺すぞ!」
 凄んではみたものの、不意の出来事に声が震えている、先程までの生温かった風も何時の間にかひんやりと冷え込んでいた。
 「そう慌てなさるな、ご覧の通りただの婆でございます。」
 皺だらけの顔を引きつらせて、潰れた声で男に話し掛ける。
 「お若い方、察すればかなりの剛の方とお見受け致します。」
 不気味とはいえ、相手が老婆一人と知って、男も落ち着きを取り戻す。
 「お、おお、確かに東軍にその人ありと言われた俺様だ、その婆が一体何用だ。」
 先程の狼狽の何処にか、剛の者と言われ気を取り直したか、床に座り直すといかにも武士の如く振舞い始める。
 「なれば無礼を承知で、この婆が願い、どうか聞いては頂けましょうか。」
 「この婆、このようななりではありますが、さる荘園にお仕えしていた者でございます。」
 「お願いと申しますのは、姫君様のこと…何卒お話を…」
 「荘園?なんだ、貴人か?」
 貴人の姫君と聞いて、興味を引かれた男が身を乗り出した。
 「さようで御座います、何卒姫様にお会いいただけましょうか。」
 老婆の話に、すっかり気を良くした男は、太刀の鞘頭で床を打つと。
 「よし!いいだろう、案内しろ会ってやる。」
 まるで、侍大将の如く威勢を張り立ち上がる。
 「おお…ありがたや、姫様は離れの庵にてお待ちに御座います、どうぞこちらへ。」
 老婆が暗がりの中を、何事もない様に進み、男は慌てて後を追っていく。

 月灯りも射さぬ夜道を僅かばかり行くと、やがて目的の庵へとたどり着いた。
 男は無精髭に手を当て、咳払いをすると
 「姫君が拙者に用と聞いて参った、入らせてもらうぞ。」
 障子戸を開けて見れば、燈台の灯りの中に女に姿が浮かぶ。
 座敷に横たわる女の姿は、なるほど貴人らしい艶やかな唐衣に艶やかな下げ髪、透き通る様な白い肌の美女である。
 ただ、この姫君、横になったまま全く動く気配がない。
 男が近付いて見れば、なんと息をしていない、動かないのではなく死んでいるのである。
 一杯食わされたと思った男は、どんと床を踏みつけると、怒りもあらわに怒鳴り出す。
 「おい婆!てめえ俺を謀ったか!何が姫様だ、こいつは屍じゃねえか!」
 男の声に、外に控えていた老婆が顔を出す。
 「謀ってなどおりませぬ、姫様の願いのためと偽りはありませぬ。」
 「ご覧のとおり、姫様は大変美しゅう御座いましたが、身体が弱く何処に嫁ぐ事も無く、逝去なされましての。」
 「姫様は以前より、名ばかりの貴人より名のあるもののふの元にに嫁ぎたいと申されておりました。」
 「年頃の姫様が嫁ぐ事も無くこのような事に…この婆はせめて、姫様が伴侶にと望まれた剛の方に、姫様を送って頂きたく…」
 そこまで言うと老婆は、袖で顔を覆って肩を震わせた。
 老婆の様子に、姫君をつてに成り上がろうとの望みも断たれ、男はすっかり気を抜かれてしまっていた。
 「なんてこった、上手い話だと思ったらこのざまだ。」
 男は座り込んで、頭を掻きながら横目で咽び泣く老婆に目を向ける。
 「おい婆、そんな所で泣いてんじゃねえ、まったく辛気臭え。」
 「まあ…なんだ、この姫様を女にしてやれってんだろう、しょうがねえ…やってやる。」
 「おおお…なんと…」
 男の言葉に、老婆が顔を上げる。
 「やってやると言ったんだ、但し事が終われば女の衣は貰っていくぞ、これでも売れば結構な金になる、いいな。」
 「は、はい、何卒…何卒姫様を宜しく…」
 「ええい、分かったから出て行け、暫く入ってくんじゃねえぞ。」

 老婆を追い出すと、男は再び座り込み腕を組んで女の屍を見下ろした。
 ああは言ったものの、幾ら美しいとはいえ屍を抱くと思うと、やはり抵抗がある。
 今まで、女をかどわかした事はあるものの、さすがに屍を抱いた事はない、しかし事を済まして衣を売れば、暫く追い剥ぎをする必要もないだろう。
 覚悟を決めた男は、横たわる女の横から整った顔を覗き込む。
 確かに呼吸はしておらず、屍の為かその顔は異様に色白い、しかしその唇に引かれた紅はその白さに相まって妙に艶かしい。
 「おい、俺は只の野盗くずれだ、侍大将とはいかねえが悪く思うなよ。」
 そう言って、唐衣の襟に手を掛けると胸元を大きく広げる、雪のように白い肌が露になり形の良い乳房がこぼれる。
 「ほう…」
 思わず溜息が漏れる、袖引き女や河原乞食の白拍子達とまるで違う、男はこれほど美しい女の身体を初めて見た。
 浅黒い男の手を女の白い乳房に伸ばせば、しっとりとした冷たい感触が心地いい。
 先端に赤い色付きに軽く歯を当てると、これもまた甘い酒の様に男を酔わせていく。
 昂ぶりを抑えられぬ男は女の帯を解き、その体の全てを手にしたい欲求に刈られていた。
 なだらかな腹からへそを通り視線を滑らせると、形の整った薄い恥毛がと慎ましやかな秘裂が目に入る。
 何時の間にか、男の一物は固く天を指し、女の身体を待ちわび振るえていた。
 「畜生、もう我慢できねえ。」
 女に覆い被さり、その身体を全身で味わう。
 冷たくも柔らかく、滑らかな身体は、今まで味わった事の無い快感。
 一物をその秘裂にあてがえば、それだけでびくりと腰が震える。
 男の一物は、更なる快感を求めて、秘裂を割り肉壷へと突き進む。
 「うおおっ!」
 女の奥まで突き入れた瞬間、全身が総毛立つ様な快感に、思わず声が漏れた。
 生娘を抱くのは初めてではない、しかしやはりこの女は、今まで抱いた如何なる女とも違う。
 貴人に生まれた女の身体が為せる業か、それとも屍を抱くという行為がそういう事なのか。
 男は我を忘れ冷たい秘胴を突き上げ、跳ねる様に揺れる白い乳房にむしゃぶりつく。
 「おおっ、くっ!うおおおお!」
 交わってから幾許も経たずして、男は柔らかな身体にしがみ付きながら、冷たい子宮に大量の熱い精を放った。
 発した精は直ぐには収まらず、何度も身体を振るわせながら、射精を繰り返す。
 それは、さながら魂ごと吐き出すような、強烈な射精であった。
 男は大きく息を吐き、身体を起こそうとして気が付いた。
 あの激しい交わいで、大量の精を吐き出したにもかかわらず、己の一物は全く納まる気配が無い。
 それどころか、痛い程にいっそう固く女の身体を求めている。
 身体にまたも、熱い昂ぶりがこみあがり、男は再び女覆い被さっていった。
 
 その後も、男は幾度となく女の屍と交わった。
 唇を合わせ、柔らかい舌を吸い上げながら、時に乳房を求め、その度に女の胎に精を吐き出した。
 しかし、何度達しても、その身体は熱に浮かされるように、女の身体を求め続ける。
 気が付けば、髪は白くなり目は落ち窪み、荒々しく屈強な身体はまるで老人の様に変わっていた。
 その異様な状況にもかかわらず、自らの異状にも気付かぬ様に、男は交わい続ける。
 そして、何十回目かの絶頂を迎え、その精の全てを吐き出した瞬間。
 男は、声にならない悲鳴を上げながら、まるで木乃伊の様に干乾びながら崩れ落ちていった。

 庵の中には女の屍と男の白骨。
 そして、生者の気配無きこの庵のなか、屍であった女の目が唐突に見開いた。
 着物の前を肌蹴たまま、女がゆらりと立ち上がる。
 生を取り戻したその肌は、初雪の如くなお白く、切れ長の目を見開いた端正な顔は、恐ろしい程に美しい。
 その瞳は、何の感情も映さぬまま、白骨となった男を見下ろしている。
 「…ご苦労であったの。」
 呟く様な女の言葉に、障子戸が開き老婆が現れる。
 「おおお、よくぞお戻りになられました、この婆、前様のお戻りを一日千秋の思いで待っておりました。」
 「あの坊主にわが身を砕かれて八十余年、まことに永かったわ。」
 「はい、まことに永う御座いました、しかし、あの憎き玄翁ももはやおりませぬ。」
 「ほほほ、所詮人の身よのう、かくなるは国中の寺を焼きつくしてくれようか、のう坊主。」
 女が目を向けると、物陰から老僧が現れた。
 「やれやれ見付かってしまったか、獣の様な男だあったが、よもや本物の獣に食われようとはの。」
 そう言って、老僧は白骨と化した男に手を合わせる。
 「この乞食坊主めが、前様に対して獣とは無礼であろう。」
 「ほほほ、まあよい面白き坊主じゃ、お主、我が獣としていかにする、奇特をもって我を封じてみるかえ、それとも、わが身にて極楽を見せてやってもよいぞ」
 不意に辺りに甘い香りが漂い始め、女は妖しく微笑み、露な乳房に手を当てる。
 普通の男であれば、その妖艶な微笑に惑わされていたであろうが、老僧はからからと笑い答える。
 「ははは、わしは奇特なぞ持ち合わせておらん、ご覧のとおりの乞食坊主じゃよ。」
 「お主の見せる極楽にも興味はあるが、あまり過ぎるとお森が妬くのでな、遠慮しておこう。」
 誘惑に動じる事も無く笑う老僧に、女もまた面白げに笑い出した。
 「ほほ、まこと面白き坊主じゃ、今宵の我は機嫌がよい、お主はもう暫し生きて、この国が荒れるのを見ておるがよい。」
 そう言うと、一陣の風が吹き、女と老婆の姿は煙の如く消えていた。
 「ふう、くわばらくわばら、妖女か禽獣か、まことえらいものに出会ってしもうたのう」
 老僧は男の白骨に語る様に言うと、そのしゃれこうべを取り上げ杖の先に乗せる。
 「どれ、せめて引導を渡してやろうかの、極楽のうちに地獄あり、いや地獄のうちの極楽かの、ともあれご用心ご用心。」
 そう唱えながら、老僧は男のしゃれこうべ連れ添いに、庵を後にするのであった。

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