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戦火の生贄
戦場での陵辱劇をテーマにした小説を中心にしています。※18歳未満は閲覧禁止
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侍魂~シュムクルの乱~(始)


 刃金の打ち合う音が響き、男の手にした刀が真っ二つに割れ弾け跳ぶ。
 男が己の武器が失われたと気付くより先に、旋風の如く返す刃が男の肩を切り裂いた。
 「ぬぐぅっ!!」
 屈強な体躯を持つ男が膝を突き、自分より二周りも小柄な少女を見上げていた。
 赤い文様の入ったアミプを纏った少女。
 雪風を切り裂くように幾本もの矢が少女を狙うが、少女は黒い髪をなびかせて、まるで舞うかの様に、手にした短刀で全ての矢を打ち払う。
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 「お帰りなさい、ここは倭人の踏み入る場所ではありません。」
 少女は膝を突く男にそう告げると、手負いの男に止めを刺す事無く雪深い地を跳ねるかのように駆け出した。
 「馬鹿な、俺があんな小娘なんぞに情けを…畜生、ふざけやがって。」
 男は、毒付きながら信じられない光景を見ていた。
 蝦夷の松前で土蔵破の際、五人もの人を殺めて獄門になる所であったが、戦働きを条件に助かったのだ。
 共に西蝦夷までやってきたのは、同じ様な荒事を仕出かした男ばかり、アイヌの蛮族相手に梃子摺るなどという事は、考えてもいなかった。
 しかし、実際には雪深い地に慣れたアイヌの戦士は地の利を生かして戦い、何より十六にも満たないような小娘に、屈強な男達がいとも容易く打ちのめされているのだ。
 「ママハハ!シクルゥ!」
 少女の声に、森の中から鷹と狼が飛び出し、それに続いて熊や梟など獣の群れが男達を襲う。
 「くそっ!また来やがった、鉄砲だ!鉄砲を使え!!」
 既に幾度も、この獣の群れに煮え湯を飲まされて来ていた男達は、藩士に願い出て用意していた、六挺の鉄砲を構えて獣の群れを迎え撃つ。
 しかし、男達にとって虎の子の鉄砲が火を噴く事はなかった。
 「な、なんだこりゃあ!?」
 気が付けば、鉄砲は引き金ごと凍り付いていた、いや、凍り付いている所では無い、銃身自体が氷の塊に閉ざされていたのだ。
 「えへへ、あんた達の好きにはさせないよっ。」
 獣の群れに交じっていたのは、まだ子供と言ってもいいような、青いアミプの少女。
 先の少女より二つ三つは年下であろう、童の如く短い髪が幼げな印象を与えている。
 だが、その少女のかざす手の先には、水晶の如くに輝く結晶が浮かび、其処から凄まじい冷気が吹き付けているのだ。
 獣を操る少女剣士と妖術の如き術を使う少女に、男達はすっかり混乱に陥っていた。
 「糞っ!糞がっ!一体なんなんだ、あのガキは!」
 「むかーっ!わたし子供じゃないもん!」
 「えーいっ!あんたたち、みんな凍っちゃえーっ!」
 男の言葉に癇癪を起こした少女が、結晶に手をかざし、輝きを増した結晶からは、益々強力な冷気が男達に吹き付ける。
 「リムルル、やめなさい!」
 「え?…あ、おねえさま…」
 少女の気がそれた隙に、倭人の男達は蜘蛛の子を散らすように逃げてゆく。
 「ああっ!逃げられちゃう!」
 慌てて男達の後を追おとしたリムルルを、おねえさまと呼ばれた少女が押し留めた。
 「いいのよリムルル、これ以上は…」
 少女は僅かに悲しげに顔を曇らせる、この姉は一族に並ぶ者のない短刀の達人でありながら、争いや殺生を好まない優しい娘であった。
 「わたしだって、本当はこんなこと…でも、あいつら絶対また来るわ、もう誰かが殺されるのはいやよ。」
 姉の気持ちを察して、リムルルもまた、そのあどけない顔を曇らせる。
 「そうね、だから守りましょう、二人で…」
 気が付けば、そんな二人を気遣う様に、獣達が周りに集まっていた。
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 「おじいちゃん!たっだいまー!」
 「こらリムルル!申し訳ありませんシャクシャイン様、ただ今戻りました。」
 シュムクルの集落に戻った二人を、待ち侘びる様に長であるシャクシャインが出迎えていた。
 既に、初老になると思われるシャクシャインは、その白い髪と髭が彼の重ねた年月を思わせる、だが老いてなお屈強な体躯と風格が、この老人が間違いなく一族を纏める長であることを物語っていた。
 「よいわよいわ、それよりもナコルル、リムルル、二人ともよく無事に戻って来てくれた。」
 シャクシャインは、その顔に深く刻まれた年輪を崩し、好々爺の様な笑顔で二人を迎える。
 「あったりまえよ、わたしとおねえさまがいれば、あんな奴らいくら来たって怖くないんだから。」
 リムルルは、その小さな身体を反らして、誇らしげに言う。
 「ふふ…もう、リムルルたら。」
 「ふはは、そうじゃな、リムルルもナコルルもカムイに愛されし立派な剣士じゃ。」
 小さな剣士の頼もしい言葉に、ナコルルとシャクシャインは顔を見合わせて笑っていた。


 「はふ…にゅ…」
 リムルルの小さな頭が、可愛らしく船を漕いでいる。
 チセと呼ばれる小屋の中、シャクシャインを中心に側近の男達と二人の姉妹が炉を囲んでいた。
 「あら、リムルル眠いの?」
 「ふぁ、らいじょーぶ……ふみゅ…」
 言葉と裏腹に、リムルルの瞼は今にも閉じようとしている。
 「はは、リムルルも今日は疲れたじゃろう、後の事はわしらに任せて休みなさい。」
 「はい…さ、リムルル行きましょう。」
 シャクシャインの言葉に、ナコルルがリムルルを連れて席を立つ。
 「ふや…おやしゅみなさい…」
 「ああ、お休み。」
 男達は、一同共に愛娘を見る様に、目を擦りながら退席するリムルルを見送った。

 「すみません、お待たせしました。」
 やがて、リムルルを寝かせつけたナコルルが、再び座に戻る。
 「リムルルは眠ったかね?」
 「はい、やはり疲れていたみたいで、横になるとすぐに…」
 「そうか、巫女の才に秀でているとはいえ、まだ幼い娘じゃからのう、二人にはすまないと思っておる。」
 「そんな…私達はメトドシカムイに従っているだけです、シャクシャイン様こそ幾つもの村を纏めて、倭人達から皆を守って下さってます。」
 「ふむ、しかし今までの戦いで、多くの戦士が死んだ、その上、松前藩は新型の鉄砲を揃えているとか。」
 シャクシャインは、やりきれない思いを噛み潰す様に呟くと、小枝を手に炉の中を廻す。
 灰の中から現れた炭は赤々と輝いて、強き長の老人として顔を照らし出していた。
 「長、その松前藩の話ですが。」
 シャクシャインは、長としての顔に戻ると、若者の話に耳を傾ける。
 若者の話によれば、松前藩もこの戦いを続ける事に益なしとして、使者より互いの代表をもって会談の席を用意したいとの、申し入れがあったとの事であった。
 続けて若者は、戦いに疲れているのはこちらも同様、この会談の機会を逃してはならないと説く。
 「カンリリカ殿の話はもっとも、だが会談の場所ピポクは既に松前に落ちた地、のこのこと出向くのは危険ではないか?」
 シャクシャインの側近の一人が、会談の話に難色を示す。
 「罠の危険は承知の上、会談には私はもとより、選りすぐりの戦士を同行させます、一人一人がキムンカムイにも劣らぬ剛の者です。」
 「お主の言う事も分かる、しかし、長に万一の事があれば。」
 男達の話は、賛成と反対に分かれ、遅々として進まずにいた。
 そこで、カンリリカはシャクシャインに向き直ると、頭を垂れ額を床に擦り付けた。
 「長…いや父上、このままでは我々は滅びる他ありませぬ、たとえ屈辱を受けるともシュムクルの民の為、何卒会談の件お願い申す。
 カンリリカ肩が震えていた、彼も会談に赴けば、負けを認めることになろう事は分かっていた。
 だが、それでも彼はシュムクルの誇りより、一族が生き延びる事を選んだのだ。
 「父上!何卒…何卒…」
 それまで、目を瞑り話を聞いていたシャクシャインが、ゆっくりと目を開いた。
 「……ナコルル…おぬしは、今の話どう考える。」
 男達も目がナコルルに集まる、最新の武器を用意した藩士を中心に、ならず者まで使って来る松前藩を相手にして、今日まで戦って来れたのは、彼女の力によるものが大きかった。
 その彼女が如何なる答えを出すのか、男達は固唾を飲んで答えを待った。
 「……私は…」
 シャクシャインの目を正面から見据えて、ナコルルはゆっくりと話し始める。
 「…私は、カムイの山を焼き、大勢の仲間の命を奪った倭人が嫌いです…でも…それでも、出来る事ならば…もう、誰にも死んで欲しくありません。」
 ナコルルの言葉を聞き終えたシャクシャインは、再びゆっくりと閉じた。
 「…よかろう…カンリリカ、ピポクに参ろうぞ。」
 そう言ったシャクシャインの顔は、何かから放たれた様に穏やかに微笑んでいた。

 
 「ふざけやがって、畜生ッ!!」
 薄暗い部屋の中、土壁に叩きつけられた徳利が、耳障りな音を上げて砕け散った。
 徳利を投げ付けたのは、堅気とは掛け離れた風貌の倭人、昼間の戦いでナコルルに指物を折られた挙句、肩に傷を負い逃げ帰った男であった。
 「連中に手を出すなだと!?あんな小娘にコケにされて、引っ込んでろってのか!?ええ?」
 「そうよ、この手を見ろ!あのガキの妖術の所為で左の指がイカレちまった、嬲り殺しにしたって気が収まらねぇってもんだ。」
 小屋の中では、幾人もの男達が殺気立っていた。
 何れも、夜盗や強盗を働いた兇状持ち、腕に罪人の墨が入った者も少なくない、本来ならば磔や獄門台に上がっている男達だ。
 「まあ、落ち着いて聞けって、何もこのまま引っ込めって話じゃねえよ。」
 一際小柄な男が、殺気だった倭人達をなだめている、小柄とはいえその風体や顔付きを見るに、この男もまっとうな人間とは言えない様だ。
 「なんでも、藩士の連中が仕掛で奴等にの頭を釣るらしい、そいつが終われば後は好きにやれとよ。」
 「けっ、せせこましい事しやがって、藩の連中も気に入らねぇが、あの小娘共は絶対に目に物見せてやる。」
 「そうそれよ、何でもあの二人、姉妹だって話だぜ、確かナコルルとリムルルとか。」
 「名前なんざどうでもいい、その仕掛けとやらが終われば、好きにしていいってなぁ、間違いねぇんだろうだろうな?」
 「ああ、ちゃんと報せが来る事になってる。」
 「ああそうかい、だったら得物の用意はしっかりしとけ、今度こそ嬲り殺しにしてやる。」
 薄暗い小屋の中に、男達の憎悪が黒くとぐろを巻いていた。


 「それでは、行って来るからの、二人とも留守を頼んだぞ。」
 そう言って、シャクシャインはリムルルの頭に手をやると、その無骨な手で優しく撫でる。
 「おじいちゃん…危ないよ、ぜったい罠だって…やっぱり、わたしもいっしょに行く。」
 「リムルル…あの、シャクシャイン様、やはり私たちも御一緒した方が。」
 心配気な二人を前に、シャクシャインは豪快に笑って見せる。
 「ははは、そう案ずるな、わしの事は心配ない、それより二人は留守をしっかりと、守っておくれ。」
 「長の言うとおりです、私とて英雄シャクシャインの息子、それに同行する者も選りすぐった勇者達だ、心配には及ばぬよ。」
 カンリリカの言葉に、脇を固める屈強な戦士が、無言で頷く。
 「わしにとって、お前達は勿論シュムクルに生まれた者は皆、我が子も同然じゃ、わしが居ない間二人で皆を守っておくれ。」
 「…うん、まかせといて!何が来たってやっつけちゃうんだから!」
 「はは、よい子じゃ、ナコルルもよいな。」
 「はい、皆様もどうか気をつけて。」
 二人は村の外れに立ち、シャクシャイン一行の姿が見えなくなるまで、その姿を見送っていた。


 シャクシャインが村を発ち、十日余りが過ぎた。
 あれ以来シャクシャインからの連絡は無く、ナコルルは不安な日々を送っていた。
 今頃はとっくにピポクに着いているはず、あれ以来倭人の襲撃はない…ということは、会談は順調に進んでいるのだろうか。
 「……さま…」
 「これで、戦が終わればいいのだけれど。」
 良くないと思いつつも、溜息混じりのひとり言が多くなる。
 「おねえさま!!」
 「あ…リムルル、一体どうしたの?」
 「どうしたの?じゃないわよ、さっきから呼んでるのに、おねえさまったら返事もしないで。」
 「ご、ごめんなさい、少し考え事をしていて。」
 「やっぱり、心配だよね。」
 普段から元気に振舞っているリムルルも、やはりシャクシャイン達が心配なのか、消沈気味である。
 「大丈夫よ、カンリリカ様も御一緒している事だし、きっと今頃は松前藩の倭人と話し合ってる頃よ。」
 「あれれー、何でカンリリカ様?おねえさまったら、もしかしてー?」
 リムルルのあどけない顔が一変して、いたずらっぽい笑いを浮かべて、ナコルルをからかう。
 「も、もうリムルルったら、からかうんじゃありません。」
 リムルルにつられて、ナコルルもまた顔を赤らめながらも、照れ笑いを浮かべていた。
 
 …ち……りん…ち…り…
 不意に、ナコルルの持つ短刀から鈴鳴りの様な音が響く。
 宝刀チチウシ、リムルルの持つハハクルと対になるこの短刀は、シュムクルに伝わる宝であり、メトドシカムイに仕える剣士であるナコルルと、メトドシカムイを繋ぐ依り代でもあった。
 「…なに……誰か…来る…大勢の人と悪意…」
 チチウシは危機を伝えていた、暫くの間無かった倭人の襲撃が迫っていると。
 「あいつら、また来たのね、今度こそやっつけてやるんだから。」
 リムルルもまたこの襲撃を知り、今にも飛び出さんばかりに息巻いていた。
 それを見て、ナコルルは慌ててリムルルを止める。
 「リムルル!あなたは、村を守りなさい、私が見に行くわ。」
 「そんなぁ、おねえさま一人なんて無茶よ!コンルがいれば、あいつらの鉄砲だって!」
 リムルルが手をかざすと、その手の中に冷気が集まり、青く輝く結晶が現れる。
 「駄目よ、コンルの力は皆を守るために使いなさい、それに、まだ戦うと決まった訳ではないわ。」
 「だって!」
 「倭人とは、きっとシャクシャイン様が、話をしてくれてる筈よ。」
 「様子を見てくるだけだから、リムルルはここで待っていてね、約束よ。」
 そう言って、ナコルルは飛び出して行く。
 「おねえさまぁっ!!」
 リムルルは、そんな姉の姿を見送る事しか出来なかった。


 「そんな…でも何で…」
 雪に覆われた山道を歩いて来る集団、それは十日程前にも剣を交えた倭人の男達であった。
 倭人といえども侍とは違う、如何にもならず者といった風体の男達。
 「あ…あれは!!」
 思わず口に手を当てる、倭人達を率いる男が肩に掛けている物、それは紛れも無くシャクシャインのアミプであった。
 何故、あの男がシャクシャイン様のアミプを!?考えるより先に、ナコルルは男達の前に飛び出していた。
 「よう、嬢ちゃん、確か…ナコルルとか言ったなあ、やっと逢えたぜぇ。」
 ナコルルを見据える男の目が、山犬の様にぎらりと光る。
 「あ、貴方、そのアミプをどうしたのです!?」
 唇が震えて喉が乾く、口にしたその質問の答えを聞くのが恐ろしい。
 「ああ、こいつか?そういや、てめぇ等の親分のモンだってなぁ。」
 男の口元が下卑た笑いを浮かべて、ナコルルを挑発する。
 「答えなさい!!そのアミプどうしたのです!!」
 「けあはははは、躯に衣はいらねえだろうが?爺ィの首なら、新冠で晒しモンになってるぜ。」
 「…!!」
 その瞬間、ナコルルは弾ける様な勢いで飛び出した。
 男達に迎え撃つ間も与えず、一番手前にいた男の脚を、地を這う様な斬撃が襲う。
 「いぎゃああああっ!!脚が!俺の脚があああぁぁっ!!」
 男は一刀の元に脚を失い、白雪を赤く染めながらのたうち回る。
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 「ママハハ!シクルゥ!」
 ナコルルの声で、森から獣が飛び出し、男達に襲い掛かる。
 「けっ、一つ覚えが…おめぇら、退却だ!!」
 男達は、襲い来る獣に対して、禄に刃も交えず逃げて行く。
 シャクシャインのアミプを靡かせて逃げるその背に、ナコルルはかつてない程の怒りを覚えていた。
 「逃がさない!!みんな追うのよ!」
 ナコルルと獣達が、逃げる男達を追い立てる、そしてようやく山道の先へと追い詰めた時。
 山の中に、六つの銃声が轟いた。
 どさりと音を立てて数匹の獣が倒れる、ここに来てナコルルはようやく自分の過ちに気が付いた、彼女は怒りに身を任せたまま、この場所に誘い込まれたのだ。
 続けて銃声が轟く。
 その度に、熊が鹿が狼が、次々にその身体を横たえる。
 「やめて!!もう、やめてぇっ!!」
 ナコルルの叫びも空しく、その叫びをかき消す様な銃声は止み鳴る事は無かった。
 「あ……ああ…ママ…ハハ?…シクルゥ?」
 獣達の屍が埋め尽くす凄惨な光景の中、呆然と立ち尽くすナコルルが友の名を呼ぶ。
 「……ゥゥゥ…クゥゥ…」
 苦しげな唸り声を上げたのは、彼女と共にあった狼のシクルゥ。
 彼は、その精悍な身体を力無く横たえ、苦しげな息を上げていた。
 「ああ…シクルゥ…ごめんなさい…ごめん…なさい…」
 ナコルルは友の横に跪き、ぽろぽろと涙を流す、シクルゥは悲しげな目をナコルルに向けると、弱々しく一声鳴いて息絶えた。
 ふらりと立ち上がるナコルル、しかし、その目に先程までの気迫は感じられなかった。
 「けくくく、あの獣共がいなけりゃ、てめぇなんぞ只の小娘よ、今までの分思い知らせてやるぜ。」
 シャクシャインのアミプを纏った男の合図で、倭人達はいっせにナコルルに斬りかかる。
 次々に襲いくる刃を、舞う様な動きでかわすナコルル、しかし如何せん相手の数が多すぎる。
 一際鋭い斬撃がナコルルを襲う、シャクシャインのアミプを纏った男のものであった。
 かわせぬと見たナコルルは、咄嗟にチチウシの刃でこれを受ける、互いの刃が軋みきりきりと音を立てる。
 以前の刀と違い、業物と思われる刀をこの状態から断ち切るの難しい、ならば身体を沈め切り抜けるかと思った瞬間。
 ナコルルは後頭部に衝撃を感じ、そのまま意識が暗転した。


 「ああ?嬲り殺しに決まってんだろうが?」
 「待てよ、村にはまだ、あの妙な術を使うガキがいるんだ、コイツは使えるぜ。」
 「ふざけんな!この傷を見ろ!すぐにでも殺してやりたいぐらいだぜ。」
 「だったら、俺もあのガキに恨みがある!この指を見ろ!」
 遠くでなにやら言い争いが聞こえる、むせ返るような臭気と冷たい床、一体此処は何処?
 「てめぇの話だろうが!さっさと起きやがれ!!」
 肺腑の空気を搾り出す様な衝撃を腹に受け、ナコルルは意識を取り戻した。
 「う…かはっ…けほっ。」
 咽せ返りながら目を開けると、薄暗い板張りの小屋に倒れていた、身体は後ろ手に縛られて自由が利かない、そして見上げた先には、倭人の男達がぎらついた目で見下ろしていた。
 「ようやく、目が覚めた様だな、あのままくたばっちまったんじゃぁ、こっちの気が収まらねぇ。」
 「頭が死んじまえば、てめぇらなんぞ烏合の衆よ、特にてめぇは散々やってくれたからなぁ、楽に死ねると思うなよ。」
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 ナコルルは倭人達の何処か引き攣った様な笑いを見ながら思った、人間とはここまで醜悪に笑えるものなのかと。
 「さあて、どうするかい?」

 「考える事ぁ無ぇ、この場でヤっちまえ!」
 「いや、あの厄介なガキの始末が先だ!」


※ここから先は、二つの結末を用意しました

ナコルルを今すぐ犯すなら、侍魂~シュムクルの乱~(艶)
リムルルをおびき出すなら、侍魂~シュムクルの乱~(惨)
に続きます。

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